「障害者雇用枠」という言葉は聞いたことがあっても、実際に何がどう違うのかは、調べてもはっきりしないことが多いと思います。
給料が下がるらしい。配慮してもらえるらしい。でも、その「らしい」の中身が分からない。
この記事は、手帳を持っている人が就職を探すときに、実際に決めなければいけないことを整理したものです。制度の説明だけでなく、障害の種別によって困る場所が違うところまで書きます。
まず決めるのは「開示するかどうか」の一点
就職の探し方は、ここで大きく2つに分かれます。
| オープン就労 | クローズ就労 | |
|---|---|---|
| 障害を | 会社に伝える | 伝えない |
| 枠 | 障害者雇用枠が中心 | 一般枠 |
| 手帳 | 必要 | 不要 |
障害者雇用枠に応募するには、障害者手帳が要ります。 手帳が無い場合は、一般枠(クローズ)になります。
そして、どちらを選ぶかで、探し方も、相談する先も、面接で話す内容も変わります。この選択が最初にあります。
それぞれの、いい面と困る面
オープン就労
いい面
- 障害に対する理解と配慮が得られやすい
- 障害者就業・生活支援センターなど、公的な支援機関が使える
- 通院や体調に合わせた働き方を相談しやすい
困る面
- 障害を理由とした偏見を受ける可能性がある
- 能力や実績より、障害のほうに注目されがち
- 求人数が一般枠より少ない
クローズ就労
いい面
- 障害を意識せずに働ける
- 能力や実績で評価されやすい
- 一般枠なので給与面で不利になりにくい
- キャリアアップの機会を得やすい
- プライバシーが保たれる
困る面
- 配慮を求めにくい(そもそも伝えていないため)
- 通院や体調不良の説明に困る場面がある
- 隠していること自体が負担になることがある
どちらが正解、という話ではありません。 体調の波の大きさ、必要な配慮の内容、その人が何を大事にするかで変わります。
追い風はあります:法定雇用率の引き上げ
数字の話をひとつ。
民間企業には「従業員のうち何%は障害のある人を雇う」という決まり(法定雇用率)があります。 これが段階的に上がっていて、
2026年7月から 2.7%(従業員37.5人以上の企業が対象)
対象になる企業が増え、必要な人数も増えています。 つまり、企業側が採用したい状況にあるということです。
これは求職する側にとって、悪い話ではありません。
ここからが本題:種別によって、つまずく場所が違う
「障害者向けの就職支援」とひとくくりにされがちですが、実際に困る場面は、種別によってかなり違います。
身体障害の場合
つまずきやすいのは「環境」の部分です。
- 通勤経路(駅の設備、乗り換えの負担)
- オフィスの構造(段差、トイレ、動線)
- 必要な設備(机の高さ、機器の配置)
能力の話ではなく、物理的な条件で選択肢が絞られます。 だから、応募前に「その会社の建物と通勤経路がどうなっているか」を確かめる必要があります。
在宅勤務が選べるかどうかが、大きく効きます。
精神障害の場合
つまずきやすいのは「波」の部分です。
- 体調に波があり、いい時と悪い時の差が大きい
- 通院の時間をどう確保するか
- 調子が落ちたときに、どこまで伝えていいか
面接では調子のいい状態で話すことになるので、実際の働き方とずれが出やすい——ここが難しいところです。
「悪いときはどうなるか」を、あらかじめ伝えられるかどうか。 これがオープンを選ぶ大きな理由になります。
発達障害の場合
つまずきやすいのは「伝え方」の部分です。
- 得意なことと苦手なことの差が大きい
- 苦手なことが「やる気の問題」と誤解されやすい
- 指示の出し方ひとつで、成果がまるで変わる
「口頭ではなく文字で指示がほしい」「同時に複数を頼まれると混乱する」——こうした具体的な条件を伝えられれば働けるのに、伝わらないと評価が下がる、という形になりがちです。
自分の取扱説明書を作れるかどうかが鍵になります。
発達障害の特性を活かした就労支援については、Neuro Dive(ニューロダイブ)徹底ガイド|発達障害の特性を活かすIT就労移行支援もあわせてどうぞ。
知的障害の場合
つまずきやすいのは「仕事の切り分け」の部分です。
- 手順が明確な仕事なら力を発揮できる
- 応用や判断を求められる場面で困る
- 職場に相談できる人がいるかどうかで、続き方が変わる
仕事内容の切り出し方と、支援者との連携が重要になります。
だから、相談先も種別で変わります
種別ごとにつまずく場所が違うということは、相談すべき相手も違うということです。
| 相談先 | 主に扱う内容 |
|---|---|
| ハローワーク(専門窓口) | 求人紹介・障害者雇用枠全般 |
| 障害者就業・生活支援センター | 就労と生活の両面(オープン就労で使える) |
| 就労移行支援事業所 | 働く準備の訓練から就職まで |
| 障害者専門の転職エージェント | 求人紹介・面接対策・企業との調整 |
どれか一つに絞る必要はありません。 併用している人のほうが多いです。
転職エージェントを使う場合に確認すること
障害者向けの求人を扱うサービスはいくつもありますが、選ぶときに見るのはここです。
自分の障害種別を、ちゃんと分かって話してくれるか。
身体・精神・発達・知的では、必要な配慮も、企業に伝えるべきことも違います。種別に関係なく同じ説明をされるようなら、合っていない可能性があります。
障がいの種別に合わせた個別キャリア支援【障害者ナビ】のように、種別ごとに支援内容を分けているサービスもあります。相談は無料のことが多いので、合うかどうかを確かめる目的で使うのがいいと思います。
お金の話:働きながら受けられるものがある
就職の話とは別に、知っておいたほうがいいことがあります。
障害年金は、働いていても受けられる場合があります。
「働き始めたら止まる」と思っている方がいますが、障害の状態で判断されるもので、就労と自動的に排他ではありません(※等級や障害の種類によって扱いが変わります)。
くわしくは別の記事にまとめてあります。
- 障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)完全ガイド|病気・ケガで働けなくなった時の生涯収入保障【2026年7月最新】
- 傷病手当(健康保険からの長期療養支援)vs 障害年金 完全比較ガイド|どちらを選ぶ・併用は可能か【2026年7月最新】
- 障害者向け給付金 完全ガイド|障害基礎年金・特別障害者手当・障害児福祉手当【2026年7月最新】
就職と並行して、こちらも確認しておくと安心です。
焦らなくていい理由
最後に、これだけは書いておきたいことがあります。
就職活動がうまくいかない時期は、誰にでもあります。 障害の有無に関係なくです。
ただ、手帳を持っていると「自分のせいだ」と思いやすい。そうではありません。 条件が合う会社にまだ出会っていないだけ、ということが本当によくあります。
そして、選択肢は思っているより多いです。
・障害者雇用枠 ・一般枠(クローズ) ・在宅勤務 ・短時間勤務から始める ・就労移行支援で準備してから ・就労継続支援(A型・B型)
どれかが「下」ということはありません。 いま自分に合うものを選べばよくて、あとから変えてもいいものです。
まとめ
- 最初に決めるのは「障害を開示するかどうか」。障害者雇用枠には手帳が必要
- オープンは配慮と支援、クローズは評価とプライバシー。どちらが正解ということはない
- 法定雇用率は2026年7月から2.7%。企業側は採用したい状況にある
- つまずく場所は種別で違う(身体=環境/精神=波/発達=伝え方/知的=切り分け)
- だから相談先も種別で選ぶ。種別を分けて話してくれるかを確認する
- 障害年金は働いていても受けられる場合がある
- 選択肢は複数あり、あとから変えてもいい
急いで決めなくていいです。 まず、自分がどこでつまずくのかを言葉にするところから始めれば十分です。
この記事で参考にした情報
- オープン就労・クローズ就労のメリット デメリット(厚生労働省 兵庫労働局) — 双方の利点と課題
- オープン就労やクローズ就労とは?(dodaチャレンジ) — 手帳の要否と枠の違い
- 障害者手帳を持つ人の就職はオープン・クローズどっち? — 法定雇用率2.7%(2026年7月〜)
- オープン・クローズで就労するメリットとデメリット(LITALICOワークス) — 支援機関の利用について
✍️ この記事を書いた人
チケットナビ編集部
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