独立を考えて、フランチャイズの資料を取り寄せた。ここまでは簡単です。
問題はその次、面談です。
相手はその道のプロで、説明に慣れています。こちらは初めてで、何を聞けばいいのかも分からない。「よく分からないまま、雰囲気で良さそうに思えてしまう」——これが一番危ない状態です。
この記事は、面談の前に決めておくことをまとめたものです。
最初に知っておくべきこと:法律で「見せなさい」と決まっている書類がある
これを知らずに面談へ行く人が多いのですが、フランチャイズには、契約前に本部が書面で説明しなければならないことが法律で決まっています。
中小小売商業振興法という法律です。ここでは「特定連鎖化事業」——つまり小売業と飲食業のフランチャイズについて、加盟しようとする人へ事前に書面で開示し、説明する義務が本部にあると定めています。
この書類を法定開示書面と呼びます。
何が書いてあるのか
開示すべき項目は、2002年(平成14年)に15項目が追加され、現在は合計22項目あります。その中には、こういうものが含まれます。
- 本部事業者の名称と住所
- 従業員の数
- 役員の役職名と氏名
- 資本の額(または出資の総額)
- 主要株主の氏名または名称
- 加盟金・ロイヤリティなどの金銭に関すること
- 契約の期間、更新、解除に関すること
ロイヤリティであれば「月額総売上の6%」というように、具体的な数字で書かれます。
つまり、こういうことです
「加盟金はいくらですか」と聞くのは、失礼でも何でもありません。
法律で、書面にして説明することが義務づけられている項目です。
遠慮する必要はまったくありません。むしろ、聞かずに契約するほうが問題です。
⚠️ ここが盲点:義務がかからないフランチャイズもある
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
さきほどの法律が対象にしているのは、小売業と飲食業のフランチャイズです。
つまり、それ以外の業種——たとえばサービス業、教育、コンサルティング、ネットを使ったビジネスなど——は、この法律の開示義務がかからない場合があります。
何が起きるか
小売・飲食のFC → 22項目を書面で開示する義務がある
それ以外の業種 → 義務がかからないことがある
→ 聞かなければ、教えてもらえないかもしれない
「聞かなければ出てこない情報がある」ということです。
だからこそ、自分から聞く必要があります。そして、聞いても書面で出てこないなら、それ自体が判断材料になります。
面談で必ず聞く「お金の5項目」
メモに書いて持っていってください。その場で思い出そうとすると、必ず忘れます。
① 加盟金はいくらか。何に対する対価か
金額だけでなく、「何の代金なのか」を聞いてください。ブランドの使用料なのか、研修費なのか、初期の道具代なのか。
返ってくるのか、返ってこないのかも確認します。多くの場合は返ってきませんが、「返らない」と明言されることを確認するのが大事です。
② ロイヤリティは、何に対して何%か
ここは要注意です。同じ「5%」でも、何に対する5%かで金額がまるで違います。
売上に対して5% → 売れれば売れるほど払う。赤字でも払う 粗利に対して5% → 仕入れを引いたあとの金額に対して 定額(月◯万円) → 売上が少ない月はきつい
「売上の◯%」の場合、赤字でも払い続けることになります。 ここは必ず確認してください。
③ 加盟金・ロイヤリティ以外に、毎月かかるお金はあるか
これがいちばん見落とされるところです。
- システム利用料
- 広告分担金(本部の宣伝費を加盟店で分担する)
- 研修費
- 仕入れの縛り(指定業者からしか買えない、など)
「月にいくら出ていくのか」を、全部足した数字で聞いてください。
④ 途中でやめるとき、何が起きるか
契約期間は何年か。途中解約はできるか。違約金はいくらか。
ここを聞かずに契約すると、「合わなかったのでやめたい」と思ったときに、大きな金額を請求されることがあります。
やめ方を確認してから、始める。 これは失礼な質問ではありません。
⑤ 契約が終わったあと、何が制限されるか
同業種を自分でやってはいけない、という取り決め(競業避止)が入っていることがあります。
期間と範囲を確認してください。「辞めたあと3年間、同じ商売ができない」となれば、それは重い条件です。
数字以外で、必ず確かめること
既に加盟している人に、直接聞けるか
これが一番確実な方法です。
中小企業庁も、加盟を検討する人に対して「実際に加盟店を経営しているオーナーに状況を確認する」ことをすすめています。
面談でこう聞いてください。
「実際に加盟されている方を、何人か紹介していただけますか」
本部が選んだ人しか紹介されない可能性はあります。それでも、紹介を渋る/断られるなら、それ自体が情報です。
やめた人がどれくらいいるか
開店した数だけでなく、閉店した数を聞いてください。
「加盟店◯◯店舗」という数字は宣伝でよく出ますが、その裏で何店やめたかは出てきません。「この3年で、契約を解除した加盟店は何件ありますか」と聞くのが具体的です。
「うまくいかなかった人」の話をしてくれるか
成功例しか話さない相手は、都合の悪い情報を出さない相手です。
「うまくいかなかった方には、どういう共通点がありますか」
この質問への答え方で、相手の誠実さがかなり分かります。「やる気がなかった人ですね」で終わるなら、要注意です。
実際に揉めているのは、この6つです
「何を聞けばいいか分からない」という人に、いちばん役立つのはこれだと思います。実際にトラブルになりやすい項目が、はっきりしています。
① 売上予測・経費予測と、実際の違い ② 加盟金が返ってくるのか、こないのか ③ ロイヤリティの計算方法 ④ 本部との貸し借りの相殺(オープンアカウント) ⑤ テリトリー権(自分の地域を守ってもらえるか) ⑥ 解約するときの違約金
面談で聞くべきことは、ここから逆算すれば決まります。 揉めている場所を、先に確かめておけばいい。
① 売上予測が、いちばん揉めます
勧誘のときに示された売上予測が、実際より大幅に高く見積もられていたという事例が指摘されています。契約後にかかる費用の説明が足りないまま契約させようとするケースも同様です。
だから、こう聞きます。
「その売上予測は、どういう根拠で出した数字ですか」
「実際にその数字を達成している店は、全体の何割ですか」
根拠を出せない予測は、予測ではなく願望です。
⑤ テリトリー権は、あいまいなことが多い
これは知らないと気づけない落とし穴です。
自分の地域に、本部や他の加盟店が出店してくることがあります。
パターンは3つあります。
・テリトリーをはっきり定めている ・そもそも定めていない ・定めてはいるが、定義があいまい
特に、本部が展開を始めたばかりの時期は要注意です。市場は広いのに加盟店が少ない段階だと、本部の直営店や別の加盟店が、同じ地域に入ってくることを認めているケースがあります。
「私の地域に、本部や他の加盟店が出店する可能性はありますか」
「それは契約書のどこに書いてありますか」
「大丈夫ですよ」という口頭の答えでは足りません。契約書の条文を指してもらってください。
④ オープンアカウントという仕組みを知っておく
聞き慣れない言葉だと思います。本部との貸し借りをまとめて相殺する勘定のことです。
仕入れ代金、ロイヤリティ、売上の入金などを本部がまとめて管理し、差し引きした金額をやりとりする形です。便利な反面、中身が見えにくくなります。
「毎月の明細は、どこまで細かく見られますか」
自分のお金の流れが見えない仕組みは、あとで確認しづらくなります。
経営指導が「実際にどれくらい」あるか
契約したのに、本部がノウハウを渡さない、指導をしないというトラブルもあります。
「サポートが充実しています」は、どの本部も言います。だから、数字で聞きます。
「担当者は、月に何回、何時間来ますか」
「それは契約書に書かれていますか」
書いていないサポートは、約束ではありません。
「話がうまい」と感じたときほど、立ち止まる
面談で気持ちが盛り上がるのは自然なことです。だからこそ、決めごとを先に作っておきます。
その場で契約しない
これだけは、面談へ行く前に決めておいてください。
- 「今日中なら加盟金が安くなります」
- 「この地域はあと1枠です」
- 「今のうちに押さえておかないと」
急がせる言い方が出たら、それは判断を鈍らせるための言葉だと考えてください。本当に良い話なら、1週間考えても消えません。
書面をもらって帰る
口で聞いた条件は、必ず書面で確認します。
「いまお話しいただいた条件を、書面でいただけますか」
これを渋られたら、そこで止めるべきです。 契約前に条件を書面で出せない相手と、契約してはいけません。
一人で判断しない
家族、友人、できれば利害関係のない第三者に見せてください。
中小企業庁は「フランチャイズ契約の留意点」というパンフレットを出しています。無料です。面談の前に一度目を通しておくと、聞くべきことが整理されます。
収入の話をどう受け止めるか
面談では、収入のモデルケースが出てくることがあります。
そこで見るべきは、金額そのものではありません。
その数字は、何店舗の平均か 上位だけの数字ではないか 下位はいくらか その数字は、経費を引いた後か、前か 何年目の数字か
「月商」と「手取り」はまったく違います。 月商300万円でも、仕入れ・人件費・家賃・ロイヤリティを引いたら、残るのはごく一部です。
必ず「手取りで、いくらですか」と聞いてください。 そして、その根拠となる数字を書面でもらってください。
それでも、面談には行く価値があります
ここまで警戒する話ばかり書きましたが、面談に行くこと自体は、とても良いことです。
理由は単純で、資料だけでは絶対に分からないことがあるからです。
- 本部の人が、どういう話し方をするか
- 都合の悪い質問に、どう答えるか
- 数字を出し渋るか、すぐ出すか
これは会わないと分かりません。 そして、会って違和感があれば、断ればいいだけです。断るのは無料です。
「行く=契約する」ではありません。 確かめに行くだけです。
面談の機会を探すには
フランチャイズの情報を集める段階と、実際に面談する段階は、別のものです。
資料を集めて比較する段階については、代理店募集.com のような一括請求のサービスを使うと、複数社をまとめて見られます。
そこから一歩進んで、実際に面談の場を設定するところをまとめているサービスもあります。
その一つが 【まちアカ】 です。FC加盟の面談マッチングを扱っています。
ただし、ここは正直に書いておきます。
ぼくがこの記事を書くにあたって公式サイトを見に行ったところ、加盟にかかる費用の金額は、サイト上では確認できませんでした。 所在地や代表者名の記載も、見つけられませんでした。
だからこそ、この記事に書いた質問が効きます。
加盟金はいくらか。ロイヤリティは何に対して何%か。
ほかに毎月かかるお金は。やめるときはどうなるか。
既に加盟している人に会わせてもらえるか。
これはどのフランチャイズに対しても、同じように聞くべきことです。 特定の会社を疑うという話ではなく、面談とはそういう場だということです。
面談前チェックリスト
【行く前に】 □ 中小企業庁「フランチャイズ契約の留意点」を読む □ 聞くことをメモに書く(下の5つ+α) □ 「その場では契約しない」と決めておく □ 家族や第三者に相談する相手を決めておく 【面談で必ず聞く】 □ 加盟金はいくら。何の対価。返るのか □ ロイヤリティは「何に対して」何%か □ ほかに毎月かかるお金は全部でいくらか □ 途中でやめるとき、違約金はいくらか □ 契約終了後、制限されることはあるか □ 既に加盟している方を紹介してもらえるか □ この3年で解約した加盟店は何件か □ うまくいかなかった方の共通点は何か □ 収入例は「手取り」か。その根拠の書面はあるか □ 売上予測の根拠は何か。達成している店は全体の何割か □ 自分の地域に本部や他店が出店する可能性はあるか(契約書のどこか) □ 毎月の明細はどこまで細かく見られるか □ 担当者は月に何回・何時間来るか。契約書に書いてあるか 【帰るときに】 □ 条件を書面でもらう □ その場でサインしない □ 家に帰って、一晩以上おいてから考える
まとめ
- フランチャイズには、法律で書面開示が義務づけられた22項目がある(小売・飲食の場合)
- それ以外の業種は義務がかからないことがある。だから自分から聞く
- 聞くべきはお金の5項目(加盟金・ロイヤリティ・毎月の費用・解約・契約後の制限)
- 数字は「手取り」で聞く。 月商と手取りはまったく違う
- 既に加盟している人に会わせてもらえるかが、いちばん分かりやすい判断材料
- 急がせる言い方が出たら、いったん止まる
- その場で契約しない。書面をもらって帰る
独立は大きな決断です。でも、決断そのものより、決断する前に何を確かめたかのほうが、あとで効いてきます。
断るのは無料です。焦らず、確かめてください。
この記事で使った情報の出どころ
- 法定開示書面について(一般社団法人 日本フランチャイズチェーン協会) — 中小小売商業振興法による開示義務・22項目
- 中小小売商業振興法を弁護士が解説(ベリーベスト法律事務所) — 開示対象となる事業の範囲
- 法定開示書面 フランチャイズ契約の要点と概説(JFA) — 開示項目の具体例
- まちアカ 公式サイト — サービス内容(2026年7月28日時点で確認できた範囲)
- フランチャイズ契約の留意点(中小企業庁) — トラブルが生じやすい項目
- フランチャイズ契約における本部とのトラブル事例(たくみ法律事務所) — 売上予測・経営指導のトラブル
- フランチャイズビジネスにおけるトラブルへの実務対応例(Kernel Consulting) — テリトリー権の実務
✍️ この記事を書いた人
チケットナビ編集部
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